STREAL STORY
工作機械

切削力のわずかな変化を検知し
加工状態を「見える化」
左からグローセル小原英輔、住友電気工業村上大介さん、小池雄介さん
高品質な金属製品の製造を行う切削加工の現場では、生産ロス低減のため加工時の異常発生をいち早く検知する必要があります。
STREALを搭載することで、加工状態の監視を実現したのが、住友電気工業株式会社が提供する「センシングツール」です。

切削加工の課題解決を目指して

金属等を用途に応じて適切な形状にする際は、専用の工具で削っていく切削加工という手法が用いられます。日本の切削加工の技術は世界的にも評価が高く、長年にわたってものづくりを支えています。
切削加工では工具に異常が発生すると正確な加工ができなくなるため、摩耗や欠損には常に細心の注意が必要です。熟練技能者は加工時の振動や音、切りくずの出方や加工表面状態などのあらゆる情報を五感で感じ取りながら加工や工具の状況を把握し、常に適正な切削状態を維持することで品質の高い加工を行ってきました。
「切削加工はKKD(勘と経験と度胸)の世界だといわれてきました。もちろん現場ではこうした要素も大切なのですが、記録を残したり比較したりといったことはできません」と語るのは、住友電気工業アドバンスマテリアル研究所の村上大介さん。その課題を解決するために開発されたのが、STREALを活用した「センシングツール」でした。

住友電気工業のアドバンストマテリアル研究所に設置されている
SUMITOMOセンシングツールのデモ機

大学の研究室で
偶然出合ったSTREAL

「最初『悲鳴をあげる工具を作ってくれ』と言われたんです」と語る村上さん。すなわち工具の異常をすぐ検知できるようにするのが重要で、まずスマートフォンに入っている加速度センサを利用したセンシングを検討したそうです。しかし加工状態のモニタリングにはデータの取得や解析が大変で、他の手段を探していました。
そんな村上さんがSTREALを知ったのは2018年、共同研究をしていた静岡大学の酒井克彦准教授(現・教授)の研究室を訪問した際のことでした。「たまたま、学生さんが持ってこられた工具にSTREALが貼られていたんです」。酒井准教授から説明を聞いた村上さんは「これだ!」と思い、すぐグローセル(当時社名・ルネサスイーストン)に問い合わせをしたそうです。
村上さんのチームで活躍する小池雄介さんは「グローセルさんでもSTREALの強みを活かせる市場を模索されていました。打合せを重ねる中で担当の方と意気投合して、一緒にやっていこうということになりました」と振り返ります。

リアルタイムに
加工状態監視できる秘密

開発チームが目指したのは、加工点に近いホルダーのひずみを計測することで、加工状態の変化を精度よく検知することでした。これには、硬く変形しづらいホルダーの微小な変化を読み取ることが必要となります。工具の剛性を下げ変形しやすくすると、切削加工の品質低下に繋がるからです。
そこで、村上さんたちは微小なひずみを測定できるSTREALを使用し、剛性をできるだけ下げずに加工中の変化を検知できるようにしました。「従来のひずみゲージは配線などの問題から工具ホルダーへの搭載が困難でした。一方、STREALは全部品をボディに内蔵でき、工作物との干渉をクリアできたんです」と小池さん。
こうした工夫によって生み出された「センシングツール」は、硬いホルダーを指で軽く押した程度の目視ではわからない力を検知することができます。そして、得られたデータは無線によって工作機械の外に設置されたPCに送信され、リアルタイムで加工状態を見られるようになっています。

STREALが搭載された
SUMITOMOセンシングツールのホルダー

STREALの特性を生かし加工を支える

「切削中に何が起きているのか見たい、というご要望は以前からあちこちで聞いていました」と村上さん。その要望に応える「センシングツール」の活用は既にスタートしており、その反響は大きいとのことです。
加工の状態を「見える化」できれば、蓄積されたデータを活用した加工の最適化、生産ロスの削減、業務の効率化や品質向上が見込まれます。STREALは小型で高精度、低消費電力という特性を生かし、その実現を支え続けます。